バイオメトリクスとは
バイオメトリスクという言葉は、メーカーで開発・製造に関わっている方や、大学の研究者以外の一般の方々にとっては、耳慣れない言葉だと思います。
バイオメトリクス(Biometrics)の語源は「biology(生物学)」と「metrics(測定)」の合成語で、「生物測定学」などと訳されています。
生物測定といっても、生物の長さを測ることではなく、「人間の生物学的な特徴を用いて個人を特定・識別する技術」を意味します。
もう少し簡単に言うと、「他人と異なる、自分だけの特徴」によって「自分である」ということを証明する技術です。
一番わかりやすいのが「顔」でしょう。
顔は個々に違っており、人間の見た目にもわかりやすいため、免許証やパスポート、社員証、学生証などには顔写真が貼付されているのを想像してもらえばわかりやすいと思います。
他人と異なり、自分にしかない特徴は、顔のほかに「指紋」や「虹彩(目の茶目の部分)」、「網膜」、「手のひらの形」、「静脈」、「筆跡」、「声」などがあります。
バイオメトリクスの歴史
バイオメトリクスの歴史には「これが始まり」という明確なものはありませんが、例えば、指紋を使ったものでは、古代バビオニアのクレイ・タブレットといわれる粘土板に、識別マークとして拇印が押されていました。
日本では、大森貝塚から出土した土器に指紋の跡が残されていました。
指紋の科学的な研究は17世紀ごろから始まったと言われており、指紋はみなそれぞれ違うことが発見されました。
19世紀の植民地時代のインドでは、公式文書に指紋や手形を押させて悪事をさせないようにしていましたし、日本では20世紀初頭に、指紋が犯罪捜査に利用されるようになりました。
しかし、バイオメトリクスはもっと身近なものとして大昔からあったのです。
個人特定に関する科学的な研究は1684年に英国王室医科大学のグリューが「指紋」について個体ごとに異なる可能性を示したことがその最初とされています。
また、1879年にフランス人のペルティヨンは、個人を同定するために、顔の長さ、上腕の長さなど典型的な14箇所の身体の寸法を記録して犯罪捜査に用いることを提案しました。
しかしその後、同姓同名でチェック項目の数値がすべて一致する人物が発見されたため、この方法は使われなくなってしまいます。
この後、採用されたのが指紋による個人識別法で、犯罪捜査に応用されたのは19世紀末のことでした。
日本では1908年10月16日に当時の司法省が受刑者の指紋採取を始めました。
一方、バイオメトリクスをコンピュータによって自動的に認識する技術研究は、1960年代に開始され、デジタル画像処理技術が一般的になった1980年代には、FBIが指紋認識技術を採用して犯罪捜査に使ったり、南アフリカ共和国で年金受給者の認証に使われたりしました。
ただ、当時の製品は高価で扱いづらく、特殊な用途以外には利用されてきませんでした。
ところが1990年代に入ると、コンピュータの処理能力の向上、アルゴリズムの改良などにより、認証技術も進歩しました。
これらの技術革新とコスト低減の実用によって、オフィスや家庭など身近なところに導入実例が増加したのです。
SF映画などで斬新なバイオメトリクスの活用方法が見れたりしますが、それらのシステムは決して映画の中だけのことではなく、実際の社会にも導入されつつあったりします。

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