あなたの親御さんや配偶者がもし、遺言書を作成していなくて、遺産相続が開始された場合、相続は法定相続人という決められた人たちに決められた割合で相続が行われることになります。
もし親御さんが遺言書を作成していたけれど、その存在を教えてもらっていないとしたら、おそらく、いきなり自宅に一通の書類が届き、突然、遺言書があったことを知らされる、ということになるでしょう。
書類には差出人が○○事務所のような、専門家名か何かになっていて、封を切ると、案内の書かれたA4サイズの用紙と「遺言公正証書」と書かれた書類が入っている、という感じでしょう。
そこで、遺言書の内容を確認することになるのですが、もし自分が亡くなった人の子供や妻、など本来、遺産を相続する人間である「法定相続人」であるにも関わらず、遺言書の中に自分の名前を見つけることができなかったとしたら、「遺産がまったくもらえないのでは・・・」と不安になる方もいるかもしれません。
ここで、「遺留分(いりゅうぶん)」という考え方が登場します。
耳慣れない言葉だと思いますが、遺留分とは、法律のなかで特定の相続人に対して保障されている、最低限の遺産を受け取る権利のようなものです。
法律は、特定の相続人の方に対し「自分は相続人なので、親が亡くなった際には相続財産を得られるはず」といった期待を保護しており、それを「遺留分」という制度として保障する規定をしています。
もし、遺言書で相続分を分配してもらえなかった相続人の方は、相続人から排除されていない、配偶者、子供、など遺産相続を受ける条件を満たしていれば、法律で最低限の取り分を保障されるのです。
それでは、この場合の最低限の取り分とは、どの程度かというと、たとえば亡くなったお父さんの相続人となる方が、Aさん、Bさん、Cさんだったとします。
もしも遺言書が存在せず、法律に書いてある通りの取り決めに従っていたとした場合、それぞれ遺産の3分の1ずつを相続できたはずです。
ところが、Aさんを抜かした遺言書が出てきたおかげで、Aさんは遺産を何も引き継ぐことができなくなりました。
この場合、相続人のなかで財産を引き継げなかったAさんは、最低でも法律に書いてある通りの取り決めの半分、つまり「6分の1」は遺産を得ることができる保障があります。
しかし、この保障は黙って待っていれば自動的に満たされるわけではありません。
遺産を多めにもらって、自分の権利を害している人に対し、財産を請求するという形をとります。
Aさんの例でいうと、Aさんの法律に書いてある通りの相続分は「3分の1」ですから、その半分の「6分の1」が遺留分になります。
Bさんがほとんどの遺産を引き継いだとすれば、原則として遺留分相当額である6分の1のお金を、Bさんに対して請求することができるのです。
これを「遺留分減殺請求」といいます。
つまり、遺言書に自分の名前がなかった・・・という事態になった場合でも、「遺留分」というものを覚えていれば、まったく違った展開になるかもしれないのです。
せっかく遺言書を残していても、遺留分のせいで遺言書の効力が弱まり故人の思った通りの遺産相続にならない、と思われるかもしれませんが、遺留分を請求しても、法律で決められた取り分よりはどうやっても少なくなるので、被相続人の意思がまったく無視されるわけではありません。
むしろ遺留分のことで残された家族がもめるようなことを考えたら、遺言書には遺留分相当の財産だけは法定相続人に相続させるよう書いておく、という考え方もあるかもしれません。
遺留分がなければ、赤の他人に全財産を与えるなどという遺言がなされると、被相続人の財産に依存して生活していた家族が路頭に迷うということにだってなりかねません。
もちろん、遺留分の請求は家族間で行われるとは限らず、遺言書に赤の他人の名前が書かれているということもありえるため、法定相続人は自分の取り分を主張するため、それらの人に遺留分減殺請求を行うことになります。
また、遺留分は法定相続人が相続排除や死亡などでその子供へ代襲相続された場合でもうけつがれます。
ただし、遺留分はあくまで相続人が請求した場合にだけ有効となるもので、相続人が遺言書の内容を優先したければ、遺言書どおりの配分で終わらせることもできます。
この遺留分請求権は、遺留分の権利者が、遺産相続の開始と遺留分を侵害している贈与や遺贈があったことを知ってから1年間で消滅時効にかかります。
1年間とは意外と短いと思うかもしれませんが、あくまで相続が開始してからではなく、相続人が遺留分を請求できることを知ってから1年間ですので、考える時間や準備する期間は十分あると言えるでしょう。
また、権利者がそのことを知らなくても相続開始から10年間経過したときも同様に権利行使できなくなります。

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